Oと点Pの間に円形開口を置く.点Pで観測されるこの開口による回折を振動曲線による図式解法を用いて解くと,回折物がないときの波U0 は虚数軸上になり,中心軸上を通る波Usa(実数軸上正の方向)より位相がp/2(4分の1波長)遅れていることになる.しかし,点Oを同じ位相で出て波は点Pでも同じ位相にある筈である.この背理はフレネル回折の欠陥とされた.

測るとやはり遅れていた...

 

ちなみに,互いに相補的な開口による波Uaと遮蔽による波Udの和は入射波U0に等しい.すなわち,

                  U0 = Ua + Ud            

の関係がある.このバビネの原理は最近になって,超音波の振幅と位相を測定し,結果を物差と分度器を使って複素平面上に作図する方法で直接実証された.

バビネの原理の説明として使われる「二つの相補的な回折スクリーン,すなわち,一方の不透明部分が他方の透明部分に対応しているような二つのスクリーンから得られる回折パターンは同一となる.」は特殊な場合(フラウンホーファー回折,点Oと点Pが十分に遠いとき)である.

 

 

関連用語:バビネの原理,フレネル回折,振動曲線,ゾーンプレート,

          フラウンホーファー回折

文献

大学の物理教育, 17 (3), 108 (2011).

ヘクト「光学II -波動光学-」, 尾崎・朝倉訳,第4, 丸善 §10.3.11.

 

フレネルの回折理論は、仏国アカデミーが主催した研究競争への応募論文であった。審査員の1人のポアソン(光の波動説に対する批判者であった)がフレネル理論によると円形遮蔽の影の中心に輝点が現われることになり、フレネル理論の不合理性として指摘した。しかし、別の審査員のアラゴによって実験的に確かめられ、フレネルの論文の矛盾を指摘した筈が正しさを証明することとなったというのは有名な逸話である。

ホイヘンス-フレネル回折理論はその後キルヒホッフにより数学的基盤が与えられ(1882)、より完成されたレイリー-ゾンマーフェルト回折理論 (1896)へと発展してゆく。ヤングの理論は忘れられた。

 

その後百年、ルビノビッチは相反するホイヘンス-フレネル理論とヤングの理論は数学的に等価であると証明した(1917年)。すなわち、キルヒホッフ回折理論では、回折波は入射波U0と、回折物の縁を源とする境界回折波UBの2つに分けられる(図d)。回折波は明部ではU0UBとの和、暗部ではUBとなる。(境界回折波の位相は暗部に向かうときはそのままであるが、明部に向かうときは反転する)

 

境界回折波はガンチによって検証された(1989年)。

 

 

アクセスカウンター