星空の活用

 

このところ、金環食、金星の太陽面通過、アイソン彗星などの天体現象やテレビドラマもあり、天文への関心が高まっています。しかし、星空が残っている地方では有効に活用されていません。星空がきれいでもそのままでは教育資源にも観光資源になりません。そんなとき、望遠鏡があれば月や木星の衛星ばかりではなく、都会では見られない星雲や星団を見せることもできます。キャンプ場や宿泊施設で望遠鏡を用意し、星空教室を開くと喜ばれます。民宿などでは小さな望遠鏡や双眼鏡を希望者に貸し出すのもよいでしょう。星を見るのは天の川がきれいな夏が一番です。流れ星を見たことのない人がかなりいます。望遠鏡を操作していると流れ星の1つや2つは見られます。

検定などは必要ありません。すこし使ってみれば誰にでも使い方を説明できます。

 

A) 双眼鏡や小型望遠鏡を貸し出す。

双眼鏡なら口径4 cm以上にします。ただし、双眼鏡は当たり外れがあるので、多少高価でも信頼のおけるメーカーのものが良いでしょう。

望遠鏡は、初めての人にも使える口径6-8 cmF値の小さい低倍率、広視野の屈折望遠鏡が向いています。貸出用の架台は微動付の経緯台にします。一晩だけ使うのなら分かりやすい経緯台、1ヶ月使うなら便利な赤道儀です。カメラ三脚は微動装置がなく、天体用にはバランスも悪くなり、初心者には扱いにくいです。

たとえばShortTube80-A程度のものを経緯台に付けます。低倍率専用にすれば、ガイド用の廉価型も役に立ちます。

望遠鏡と一緒に、星座早見盤と季節の星図、赤い小ライトも貸出します。

 

ここで紹介している4.5cm広視野携帯望遠鏡を作って、実際に夜使えるとよいのですが、完成までに数日掛かります。30分程度で完成する元のセット(国際光器製)も、三脚にしっかり付けると楽しめます。それは簡易鏡筒バンドと三脚のセットを用意すると可能になります。

 

手頃な値段の広視野望遠鏡(RFT)をいくつかあげます。

 

a) ShortTube80-A (米オライオン)+ミニポルタ(アイベル) 

口径80mm, 400mm, F5.  2.8万円 + 2万円

Ep20mm, 20, 3.3. Ep9mm, 44, 1.5.

b) mini SD80A(スコープタウン)5.2kg, 4.4万円

口径80mm, 560mm, F7. 

K25mm, 22.4, 1.8. K10mm, 56, Or6mm, 93.

c) MK-80S(ミザール)3.3万円

口径80mm, 640mm, F8. 

K20mm, 32, 1.3. PL6.5mm, 98, 0.5.

 

ただし、mini SD80AMK-80Sは最低倍率でもRFTとしては視野が狭い。Expanse20mm(見掛視界 66度、8,400円)、PhotonED25mm(見掛視界 60度、7,800円)程度か、せめてPL30mm(見掛視界 50度、ビクセン・ケンコーなど、4-5千円)が欲しい。

実視界は2度以上欲しいです。低倍率では誤差がすこし出ますが、

[実視界] = [見掛視界] ÷ [倍率]

で計算できます。

 

B) 星空教室を開く

多くの人に見せるには追尾が楽な赤道儀です。ここで取り上げたStarBlast 4.5 EQ ShortTube80-Aでもできます。反射式だともう1廻り大きい口径13cm, f=650mm, F5のものが少々の追加予算で各メーカーから出ています。夏休みに帰省している学生やボランティアなどの協力が得られると実施しやすくなります。シュミットカセグレン型は筒が短く、口径が20cm程度になるとアクセサリーも増え持ち味が発揮されます。ただし、この大きさになると本格的で全体の重さも価格もかなり高くなります。

 

架台と三脚が一緒になったドブソニアン式が20cm30cmの大口径を手頃な価格で入手できます。20cm4万円程度。30cm~10万円)になるとそれだけで小さな天文台です。重さはさすがに20cmで鏡筒+架台で(11+12)kgから、30cm では(21+17) kgになります。10インチ(25cm)のものは多くの天体趣味人は大きさに尻込みしているが、一度は使ってみたいと思っているものです。ボランティアの募集にも効き目があるでしょう。

 

C) 流れ星

夏のペルセウス座流星群のときなら、望遠鏡はいりません。星図とビーチで使う折畳の長椅子などの貸出でOKです。ただし、2014年は条件がよくありません。みずがめ座h流星群が5月の連休に活動し、条件もよいです。

 

D) 星空お持ち帰り

デジカメが良くなり、天の川などの星空を誰でも撮れるようになりました。カメラ三脚とレリーズを用意して、手持ちのコンパクトデジカメで星空を持ち帰ってもらうのも、手が掛からず喜ばれるでしょう。

撮り方の説明と焦点距離による適正露出の表などを用意します。

 

消費電力が少ないからと言ってLEDを使った明るい街灯などを設置すると星空はたちまち損なわれてしまいます。現在のLED光源は指向性が強く遠方まで無用の光を届けてしまいます。星空資源を大切にしましょう。

 

参考文献

1) Isotope News, No.709, pp.78-80 (2013).

2) Sky & Telescope, August 2012, p.86.