RFTは光害の少ない夜空の暗いところに持って行って使うものです.したがって,都会の忙しい方には向いていません.広視野携帯望遠鏡(Pocket-RFT)は価格から言って普段は眠っていても,年に何回か使用の機会があれば十分ですが,普通の望遠鏡は使わなければ意味がありません.都会で月や二重星の観察用としてビクセンのA70Lf の仕様も比べてみました.このクラスは子供用の入門機です.長く使いたいなら8cmクラスのEDレンズのものをお勧めします.見え方が違います.標準的な望遠鏡は各社から出ているものを予算に応じて選ぶと良いでしょう.また,この口径の望遠鏡にはムーングラスは必需品です.

ShortTube 80A3度を超える広視野で,アンドロメダ大星雲,オリオン大星雲,スバル,プレセペ星団などの全体を視界に入れながら詳細を観察できます.A70Lf F値が大きく,口径7cmのスペック通りの性能が出るでしょう.しかし,PL6.3mm接眼レンズはアイレリーフが短く眼鏡を掛けたままだとやや覗きにくくなります. 80-Aはファインダーもいらないくらいなのですが,良いものが付属しています. A70Lf のファインダーは24mm径で都市部では力不足ですが,月や惑星観察には支障はありません.

山やキャンプに行くときは,カメラ三脚が持ち運びに便利ですが,しっかりしたものでないと振動が乗ります.気になるときはファインダー(330g)を外すと少しよくなります.また,パンハンドル1つで固定するものよりも,水平・垂直それぞれにクランプが付いたものの方が天体用には適しています(参考:トライテック三脚,1.7kg, 9千円).A70Lf を載せているミニポルタは小型軽量で,80Aを搭載するのにも適していますが,単体売りはありません.望遠鏡を日中野外に置くときは必ず蓋をして下さい(ファインダーにも覆いを).太陽が入ると危険です.

惑星など明るい星を見ると青い滲みが出るのは,アクロマートレンズでこのF値では仕方ありません.ニュートン式反射望遠鏡の放物面鏡のコマ収差はレンズの中心から入った光と周辺から入った光のズレによって生じるので,バローレンズなどで補正することができます.しかし,屈折望遠鏡の色収差は対物レンズを通過した点で生じますから,バローレンズによる補正は有効ではありません.F値の小さいアクロマートの屈折望遠鏡にバローレンズを使う主な理由は,高倍率用の焦点距離の短い接眼レンズは一般に覗きにくくなるためで,覗きやすさの問題です.したがって,80A2xバローを付けてF=10にしても,高倍率ではA70Lfのように見えるようにはなりません.

面白いのは,ShortTube 80-A蓋が二重になっていて,小さい方を外すと,口径43 mm, F=9となり青い滲みがほぼ消える仕掛です.そして,2xバローレンズを使うと9mmの接眼レンズで~90倍となります.これは高倍率の目安,口径をcmで表しその20倍,に合っています.

そこで,埴毛紙を使って口径を57mmに絞るとF=7になります.対物レンズに触れないように薄いアクリル板や厚紙で裏打ちして,取付けに便利なツマミも付けるとよいでしょう.青い滲みは完全には消えませんが,かなり改善されるはずです.口径43 mmと口径57mmでは相当違います.バローは欲張らず2xにしましょう.この方法は他の短焦点のアクロマートレンズの望遠鏡にも使えます.F7F9に絞ると効果が見える筈です.丸い穴の空け方は,コンパスの先にカッターが付いたものが使い良く,裏技が「なずな工作室」の遮光環を作るに出ています.

広視野屈折望遠鏡はケンコーからF=5のものが出ていますが,口径が10cmからで相当重くなります.小型軽量で低倍率から高倍率まで,それに写真儀にも優れた口径7-8cmのものが各社からあります.それらは,EDガラス, SDガラス, 蛍石などを使ったアポクロマートで価格がかなり高くなり,天体趣味人用です.

 

以上は使用しての比較でなく,仕様を比べたものです.